ASSIST プログラム
ボツリヌス療法とニューロリハビリテーション(ASSISTプログラム)
脳卒中や頭部外傷などにより中枢神経系が損傷されると、しばしば手足に麻痺を生じ生活に大きく影響します。中枢神経損傷に由来する麻痺は、力が出ない・細かく動かないといった、以前から見て「マイナス」の症状を起こすとともに、徐々にこわばり(痙縮:けいしゅく)が高まり、つっぱる・こわばるといった有害な「プラス」の症状も加わってくることが多いのが特徴です。さらに麻痺肢を使用しない状態が続くと、マイナス・プラスの症状がより増悪し、『パフォーマンス低下の悪循環』を形成してしまいます(図1)。
1.ボツリヌス療法
中枢神経損傷による麻痺の病態で、特にこわばり(痙縮)は、病院を退院したあとの在宅生活期に顕著となってくることも多く、つらいリハビリを経て自宅に戻ったあと、患者さんがその人らしい生活に向けて進んでいこうという気持ちを減退させる要因となりえます。
こわばり(痙縮)は、自ら行う動作(active function)に影響するほか、痛みやスパズムなど身体的・精神的苦痛を生じたり、介護のしにくさ(passive function)の要因となるなど、患者さんの生活にいろいろな形で影響を及ぼします(図2)。
当院では、こわばり(痙縮)に対する治療の1つとして「ボツリヌス療法」を行っています。治療の詳細についてはhttp://btx-a.jp/index.htmlをご参照ください。
ボツリヌス療法を希望される場合、まずは適応の判断や治療の説明のためリハビリテーション科外来での診察が必要です(図3)。詳しくは、外来窓口あるいはお電話でお尋ねください。
2.ニューロリハビリテーション(ASSISTプログラム)
当院では、中枢性の麻痺を後遺し在宅で生活されている方を対象に、麻痺そのものの改善や生活でのパフォーマンス向上を図ることを目的とした、短期集中入院リハビリテーションプログラム「ASSISTプログラム」を行っています(図4)。
最近の脳科学の知見から発展中のニューロリハビリテーション理論を基に、ボツリヌス療法を主体としたこわばり(痙縮)のコントロール、機能的電気刺激(FES)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を併用した集中的な訓練と生活上での使用の支援を通し、冒頭の図のような中枢性麻痺で陥りやすい 『パフォーマンス低下の悪循環』を断ち切り、下図(図5)のような『パフォーマンス向上の好循環』へと導く取り組みです。学習された不使用状態からの脱却や脳の可塑性変化を促し、麻痺の改善やパフォーマンスの向上を目指します。
ASSISTプログラムは脳卒中等による麻痺の後遺症がある方が対象ですが、完全麻痺で筋の動きが全くない場合や、リハビリを進める上で必要なコミュニケーションが取れない場合,モチベーションがなくリハビリができない場合などは、効果が望めないため適応とはなりません。ASSISTプログラムの原則的な適応は図6をご参照ください。
ご本人あるいはご家族が適応となるかどうかについては、ご自身では判断し難いと思われます。希望される方は、適応の判断、治療の説明等のため、最初に外来診察(担当医:高橋)を行い適応の判断、予定の調整をさせて頂きます。ASSISTプログラムの流れは図7をご参照頂き、詳しくは外来窓口あるいはお電話でお尋ねください。